弁護士コラム

熊本で相続が発生したら?まずやるべき手続きと期限を分かりやすく解説

2026.06.02

ご家族が亡くなられた直後は、悲しみの中で葬儀や役所の手続きに追われ、「相続のことまで考える余裕がない」という方がほとんどです。

しかし、相続手続きの中には、7日以内、3ヶ月以内、4ヶ月以内、10ヶ月以内、3年以内など、法律上の期限が決められているものがあります。特に、借金がある可能性がある場合の相続放棄や、相続税の申告、不動産の相続登記は、期限を過ぎると不利益が生じるおそれがあります。

この記事では、熊本で相続が発生した方に向けて、相続発生後にやるべき手続きを時系列で整理し、注意点を分かりやすく解説します。

まず確認したい相続手続きの期限一覧

相続では、「今すぐ必要な手続き」と「期限までに判断が必要な手続き」を分けて考えることが大切です。

時期・期限 主な手続き 窓口・関係機関 注意点
7日以内 死亡届の提出 市区町村役場・区役所 死亡の事実を知った日から7日以内に提出します。熊本市でも死亡届は本籍地・死亡地・届出人所在地のいずれかの市区町村で手続きできます。
速やかに 年金関係の手続き 年金事務所など 年金受給者が亡くなった場合、死亡届や未支給年金の請求が必要になることがあります。マイナンバーが収録されている場合、死亡届は原則省略できることがあります。
14日以内 国民健康保険などの資格喪失手続き 熊本市各区役所など 熊本市の国民健康保険では、死亡による資格喪失届は死亡日から14日以内とされています。
できるだけ早く 遺言書・相続人・相続財産の調査 家庭裁判所、法務局、金融機関など 自筆証書遺言を見つけた場合、勝手に開封せず、家庭裁判所の検認が必要になることがあります。
3ヶ月以内 相続放棄・限定承認の検討 家庭裁判所 相続放棄は「自己のために相続の開始があったことを知った時」から3ヶ月以内に家庭裁判所へ申述する必要があります。
4ヶ月以内 準確定申告 税務署 亡くなった方に確定申告が必要だった場合、相続開始を知った日の翌日から4ヶ月以内に申告・納税します。
10ヶ月以内 相続税の申告・納税 税務署 相続税の申告期限は、死亡を知った日の翌日から10ヶ月以内です。
3年以内 相続登記 法務局 2024年41日から相続登記が義務化され、不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内の登記が必要です。正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の可能性があります。

1.相続発生直後に行う手続き

死亡届の提出

死亡届は、死亡の事実を知った日から7日以内に提出する必要があります。提出先は、亡くなった方の本籍地、死亡地、または届出人の所在地の市区町村役場です。熊本市内であれば、各区役所などが窓口になります。

死亡届は、通常、死亡診断書または死体検案書と一体になっています。提出後、火葬許可証の発行にもつながるため、葬儀社と相談しながら進めるケースも多い手続きです。

年金・健康保険・介護保険などの手続き

亡くなった方が年金を受け取っていた場合、年金受給権者死亡届や未支給年金の請求が必要になることがあります。現在は、亡くなった方のマイナンバーが日本年金機構に収録されている場合、年金受給権者死亡届は原則省略できることがあります。ただし、未支給年金を受け取れるご遺族がいる場合は、別途請求手続きが必要です。

また、熊本市の国民健康保険に加入していた方が亡くなった場合、死亡日から14日以内に資格喪失の届出が必要とされています。資格確認書や保険証、喪主の口座情報などが必要になることがあります。

介護保険については、介護サービスの利用状況によって必要な手続きが変わります。高額介護サービス費の払い戻しが生じることもあるため、区役所の担当窓口で確認しておくと安心です。

2.遺言書があるか確認する

相続手続きで最初に確認すべき重要事項のひとつが、遺言書の有無です。

遺言書がある場合、原則として、その内容に沿って遺産を分けることになります。遺言書がない場合は、相続人全員で遺産分割協議を行う必要があります。

自筆証書遺言を見つけた場合の注意点

自宅の金庫、仏壇、机の引き出しなどから自筆証書遺言が見つかった場合、勝手に開封してはいけません。家庭裁判所での「検認」が必要になる場合があります。

検認とは、遺言書の存在や状態を相続人に知らせ、偽造・変造を防ぐための手続きです。ただし、公正証書遺言や、法務局で保管されている自筆証書遺言については、検認が不要とされています。

熊本で遺言書が見つかった場合は、熊本家庭裁判所での手続きが必要になることがあります。遺言書の内容に疑問がある場合や、他の相続人との争いが予想される場合は、開封や手続きを進める前に弁護士へ相談することをおすすめします。

3.相続人を確定する

相続手続きを進めるには、まず「誰が相続人なのか」を確定する必要があります。

一般的には、亡くなった方の出生から死亡までの連続した戸籍、除籍、改製原戸籍などを取り寄せます。戸籍を確認することで、配偶者、子、父母、兄弟姉妹など、誰が法定相続人になるのかを判断します。

戸籍収集は以前より便利になっています

2024年31日から、戸籍証明書等の広域交付制度により、本籍地以外の市区町村窓口でも戸籍証明書や除籍証明書を請求できるようになりました。これにより、本籍地が遠方にある場合でも、最寄りの市区町村窓口でまとめて請求できる場面があります。

ただし、代理人や郵送では利用できないなどの制限もあります。相続人が多い場合、再婚歴がある場合、本籍地が何度も変わっている場合などは、戸籍の読み取りだけでも時間がかかることがあります。

法定相続情報一覧図を活用する

相続手続きでは、金融機関や法務局などに何度も戸籍一式を提出する必要が生じます。その負担を減らす方法として、法定相続情報証明制度があります。

これは、戸籍一式をもとに法定相続情報一覧図を作成し、法務局で認証を受ける制度です。認証文付きの一覧図の写しは、相続登記、預貯金の払戻し、相続税申告、年金手続きなど、さまざまな相続手続きで利用できる場合があります。

相続手続きが複数ある場合は、早めに活用を検討するとよいでしょう。

4.相続財産を調査する

相続財産には、プラスの財産だけでなく、マイナスの財産も含まれます。

プラスの財産の例

預貯金、不動産、現金、有価証券、自動車、生命保険金、退職金、貴金属、骨董品、事業用資産などが考えられます。

熊本では、実家や農地、山林、空き家、共有名義の土地などが相続財産に含まれることも少なくありません。特に不動産は、固定資産税の納税通知書、登記簿、名寄帳などを確認し、漏れがないように調査することが大切です。

マイナスの財産の例

借金、住宅ローン、カードローン、未払税金、未払医療費、保証債務などです。

相続では、原則として借金も引き継ぐことになります。そのため、預貯金や不動産だけを見て判断するのではなく、郵便物、通帳の引き落とし履歴、督促状、契約書、信用情報なども確認する必要があります。

借金があるか分からない段階で、遺産を処分したり、預金を使ったりすると、後から相続放棄が難しくなるおそれがあります。少しでも不安がある場合は、早めに弁護士へ相談してください。

5.相続放棄をするか判断する

相続放棄とは、亡くなった方の財産も借金も一切引き継がないための家庭裁判所での手続きです。

相続放棄は、単に「私は相続しません」と他の相続人に伝えるだけでは足りません。家庭裁判所に対して、相続放棄の申述を行う必要があります。

相続放棄の期限は3ヶ月以内

相続放棄は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内にしなければなりません。これは、必ずしも死亡日から3ヶ月という意味ではありませんが、多くのケースでは死亡を知った日から期限を数えることになります。

3ヶ月を過ぎると、原則として相続を承認したものとして扱われるおそれがあります。

借金があるか分からない場合

「借金があるかもしれないが、まだ調査が終わっていない」という場合は、家庭裁判所に熟慮期間の伸長を申し立てることを検討します。

特に、次のようなケースでは早めの判断が必要です。

  • 消費者金融やカード会社から請求書が届いている
  • 亡くなった方が事業をしていた
  • 保証人になっていた可能性がある
  • 不動産よりも借金の方が多い可能性がある
  • 相続人同士で財産の内容を共有してもらえない

相続放棄は、期限を過ぎてから慌てても対応が難しくなることがあります。熊本で相続放棄を検討している方は、3ヶ月の期限が迫る前に高石法律事務所へご相談ください。

6.準確定申告が必要か確認する

亡くなった方が確定申告をする必要があった場合、相続人が代わりに申告する必要があります。これを準確定申告といいます。

準確定申告では、亡くなった年の11日から死亡日までの所得を計算し、相続の開始があったことを知った日の翌日から4ヶ月以内に申告・納税します。

たとえば、次のような方は準確定申告が必要になる可能性があります。

  • 自営業・個人事業をしていた
  • 不動産収入があった
  • 年金収入が一定額を超えていた
  • 医療費控除などの還付を受けたい
  • 株式や不動産を売却していた
  • 複数の収入があった

準確定申告は税務の手続きです。相続トラブルと税務申告が絡む場合は、弁護士と税理士の連携が必要になることもあります。

7.遺産分割協議を行う

遺言書がない場合、相続人全員で「誰が、どの財産を、どれだけ取得するか」を話し合います。これを遺産分割協議といいます。

遺産分割協議は、相続人全員の合意が必要です。1人でも合意しない相続人がいる場合、協議は成立しません。

遺産分割協議書を作成する

話し合いがまとまったら、遺産分割協議書を作成します。遺産分割協議書には、相続人全員が署名し、実印を押印します。通常、印鑑証明書も必要になります。

遺産分割協議書は、預貯金の解約、不動産の名義変更、株式の移管などに必要です。

遺産分割で揉めやすいケース

相続では、次のような場面でトラブルになりやすいです。

  • 長男が実家を取得する代わりに、他の相続人へ代償金を払う必要がある
  • 親の介護をしていた相続人が多く取得したいと主張している
  • 生前贈与を受けた相続人がいる
  • 遺言書の内容に納得できない相続人がいる
  • 相続人の一部が財産を開示しない
  • 不動産を売るか残すかで意見が割れている
  • 兄弟姉妹の感情的対立が強い

遺産分割の話し合いは、家族間の感情が絡むため、当事者だけで解決しようとすると長期化することがあります。早い段階で弁護士が入ることで、法律上の見通しを整理し、冷静な解決を目指しやすくなります。

8.相続税の申告が必要か確認する

相続税は、すべての相続で必ず発生するわけではありません。

相続税がかかるかどうかは、遺産総額が基礎控除額を超えるかどうかで判断します。

相続税の基礎控除

相続税の基礎控除額は、次の計算式で求めます。

3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数

たとえば、法定相続人が3人の場合、基礎控除額は4,800万円です。遺産総額がこの金額を超える場合、相続税の申告が必要になる可能性があります。

相続税の申告期限は10ヶ月以内

相続税の申告・納税期限は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10ヶ月以内です。

10ヶ月と聞くと余裕があるように感じますが、実際には、戸籍収集、財産調査、不動産評価、遺産分割協議、申告書作成を行う必要があり、あっという間に期限が迫ります。

特に、不動産が多い相続や、相続人同士で揉めている相続では、早めの対応が重要です。

9.不動産がある場合は相続登記を忘れずに行う

熊本県内の実家、土地、農地、山林、マンションなどを相続した場合は、相続登記が必要です。

2024年41日から、相続登記は義務化されました。不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内に相続登記を行う必要があります。正当な理由なく期限内に登記をしない場合、10万円以下の過料が科される可能性があります。

過去の相続も対象になる場合があります

2024年41日より前に発生した相続でも、相続登記が未了の不動産は義務化の対象になります。この場合、原則として2027331日までに相続登記をする必要があります。

「祖父名義のままになっている土地がある」「実家の登記を長年放置している」というケースでは、相続人が増え、手続きが複雑化している可能性があります。

遺産分割がまとまらない場合

遺産分割がまとまらず、3年以内に通常の相続登記が難しい場合には、相続人申告登記という制度を利用できる場合があります。これは、相続登記の義務を履行するための簡易な方法として設けられた制度です。

ただし、相続人申告登記は、不動産の権利関係を最終的に確定するものではありません。不動産を売却したり、担保に入れたりする場合には、通常の相続登記が必要になります。

熊本地方法務局では、登記手続案内が予約制で実施されています。
ただし、遺産分割で揉めている場合や、誰が不動産を取得するか決まらない場合は、登記手続きの前に法的整理が必要になるため、弁護士への相談が有効です。

熊本で相続について弁護士に相談すべきケース

次のような場合は、早めに弁護士へ相談することをおすすめします。

  • 相続人同士で話し合いが進まない
  • 遺産分割で兄弟姉妹と揉めている
  • 遺言書の内容に納得できない
  • 遺留分を請求したい、または請求された
  • 借金があるため相続放棄を検討している
  • 3ヶ月の相続放棄期限が迫っている
  • 相続人の一部が財産を隠している疑いがある
  • 不動産を誰が取得するか決まらない
  • 県外の相続人と連絡が取りにくい
  • 亡くなった方の預金を一部の相続人が使い込んでいる可能性がある

相続は、単なる事務手続きではありません。家族関係、財産の内容、過去の介護、生前贈与、遺言書の有無など、さまざまな事情が絡み合います。

早い段階で弁護士に相談することで、感情的な対立を深める前に、法律上の見通しを整理できます。

熊本の相続手続き・遺産分割トラブルは高石法律事務所へ

相続手続きは、戸籍の収集や財産調査だけでも大きな負担になります。さらに、相続人同士の意見が合わない場合や、遺言書・遺留分・相続放棄・不動産の分け方が問題になる場合は、当事者だけで解決することが難しくなります。

高石法律事務所では、熊本で相続にお悩みの方に向けて、相続手続きの整理、遺産分割協議、相続放棄、遺留分侵害額請求、相続トラブルの交渉・調停対応などをサポートしています。

「何から始めればいいか分からない」
「相続人同士の話し合いが進まない」
「借金があるかもしれず、相続放棄を迷っている」
「実家や土地の相続で揉めそう」

このようなお悩みがある方は、期限が迫る前に一度ご相談ください。

熊本で相続に関する不安を抱えている方は、高石法律事務所の初回相談をご利用ください。

よくある質問

Q1. 熊本で相続が発生したら、最初に何をすればよいですか?

まずは死亡届、年金、健康保険などの手続きを行いながら、遺言書の有無を確認します。その後、相続人の確定、相続財産の調査、相続放棄をするかどうかの判断へ進みます。特に相続放棄には3ヶ月の期限があるため、借金がある可能性がある場合は早めの確認が必要です。

Q2. 相続放棄は自分でできますか?

相続放棄は家庭裁判所に申述する手続きであり、ご自身で行うことも可能です。ただし、期限が迫っている場合、財産を一部使ってしまった場合、借金の有無が分からない場合、他の相続人との関係が複雑な場合は、弁護士に相談した方が安全です。

Q3. 遺産分割協議はいつまでに行う必要がありますか?

遺産分割協議そのものに一律の期限はありません。ただし、相続税申告が必要な場合は10ヶ月以内の申告期限があり、不動産がある場合は相続登記の3年以内の期限もあります。
そのため、期限がないからといって放置せず、早めに協議を進めることが大切です。

Q4. 相続税は必ず申告しなければなりませんか?

必ずではありません。遺産総額が「3,000万円+600万円×法定相続人の数」の基礎控除額を超える場合、相続税の申告が必要になる可能性があります。
不動産がある場合は評価額によって判断が変わるため、税理士への確認が必要になることがあります。

Q5. 不動産の名義変更をしないままでも問題ありませんか?

現在は問題があります。202441日から相続登記が義務化され、不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内に相続登記をする必要があります。正当な理由なく放置すると、10万円以下の過料が科される可能性があります。

代表弁護士髙石 雅之

執筆者

代表弁護士:髙石雅之

所属 熊本県弁護士会
登録番号 49659

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