弁護士コラム

相続人調査・戸籍収集の進め方|戸籍謄本の集め方と注意点

2026.06.03

預貯金の解約、不動産の相続登記、遺産分割協議書の作成など、相続手続きの多くでは「誰が法定相続人なのか」を戸籍で証明する必要があります。そのために必要になるのが、亡くなった方(被相続人)の出生から死亡までの一連の戸籍です。

もっとも、実際に戸籍を集め始めると、「古い手書きの戸籍が読めない」「本籍地が県外にあり、どこへ請求すればよいか分からない」「思っていたより相続人が多かった」といった理由で手続きが止まってしまうことがあります。

この記事では、熊本で相続手続きを進める方に向けて、相続人調査と戸籍収集の基本的な流れ、戸籍の広域交付制度の注意点、弁護士に依頼するメリットを分かりやすく解説します。

1. 相続人調査とは?なぜ戸籍収集が必要なのか

相続人調査とは、戸籍を確認して、法律上の相続人を確定する作業です。相続では、配偶者、子、親、兄弟姉妹など、家族関係によって相続人になる人が変わります。そのため、思い込みだけで相続人を判断することはできません。

現在の戸籍には、死亡した事実は記載されます。しかし、転籍や婚姻、離婚、戸籍制度の改製などにより、過去の身分関係が現在の戸籍だけでは分からないことがあります。前婚の子、認知した子、養子縁組の有無などを確認するためにも、出生から死亡まで戸籍を連続してたどる必要があります。

銀行、証券会社、法務局などに対して「ほかに相続人がいないこと」を説明するためにも、戸籍の連続性は重要です。不動産を相続する場合は相続登記の期限も意識する必要があるため、戸籍収集で長期間止まらないよう、早めに進めることが大切です。

2. 熊本で相続人調査を進める基本的な手順

戸籍収集は、基本的に「新しい戸籍から古い戸籍へ」とさかのぼって進めます。大まかな流れは次のとおりです。

・亡くなった時点の戸籍(除籍謄本など)を取得する。まずは、被相続人の最後の本籍地の市区町村で、死亡の記載がある戸籍を取得します。熊本市内に本籍がある場合は、熊本市の窓口で請求することになります。

・一つ前の戸籍を確認する。取得した戸籍の「従前戸籍」「改製」「転籍」などの記載を確認し、次にどの市区町村へ請求すべきかを読み取ります。

・出生時の戸籍にたどり着くまで繰り返す。除籍謄本、改製原戸籍謄本などをつなぎ合わせ、被相続人の出生から死亡までが途切れない状態にします。

・相続人の現在の戸籍を取得する。相続人が確定したら、その方が現在も生存しているか、または亡くなっている場合に代襲相続が発生するかを確認します。

・戸籍の内容を整理する。相続関係説明図や法定相続情報一覧図の作成につなげるため、相続人の範囲と関係性を分かりやすく整理します。

戸籍の名称や必要通数は、家族構成や本籍地の移動回数によって異なります。特に、転籍が多い方、再婚歴がある方、兄弟姉妹が相続人になるケースでは、必要な戸籍が多くなりやすい点に注意が必要です。

3. 戸籍の広域交付制度を使えるケース・使えないケース

令和6年(2024年)3月1日から、戸籍証明書等の広域交付制度が始まりました。これにより、本籍地が熊本県外にある場合でも、一定の範囲で最寄りの市区町村窓口から戸籍を請求できるようになりました。熊本市にお住まいの方が、県外にある親の戸籍を熊本市の窓口で請求できる場合もあります。

ただし、広域交付制度には次のような制限があります。

・請求できる人は、本人、配偶者、父母・祖父母などの直系尊属、子・孫などの直系卑属に限られます。

・兄弟姉妹、おじ・おば、甥・姪など、直系ではない親族の戸籍は、広域交付では請求できない場合があります。

・郵送請求や、委任状による代理人請求はできません。請求できる本人が窓口へ行く必要があります。

・一部事項証明書、個人事項証明書(戸籍抄本)は広域交付の対象外です。

・コンピュータ化されていない一部の戸籍・除籍は、広域交付で取得できないことがあります。

・窓口では、マイナンバーカード、運転免許証、パスポートなど、官公署発行の顔写真付き本人確認書類が必要です。

広域交付制度は便利ですが、相続人が兄弟姉妹になるケースや、古い戸籍が多いケースでは、結局それぞれの本籍地へ個別に請求しなければならないこともあります。熊本市で請求する場合も、受付窓口や受付時間、当日交付の可否を事前に確認しておくと安心です。

4. 戸籍収集でよくあるつまずきポイント

戸籍収集は、単に書類を取り寄せるだけの作業に見えます。しかし、相続の現場では次のような理由で手続きが止まることが少なくありません。

(1)古い戸籍が読めない

大正時代や昭和初期の改製原戸籍には、手書きのくずし字や旧字体が使われていることがあります。どこに本籍地が移ったのか、誰がいつ戸籍から抜けたのかを読み取れず、次の請求先が分からなくなることがあります。

(2)本籍地が何度も変わっている

結婚、転籍、就職、引っ越しなどで本籍地が何度も変わっている場合、複数の自治体に戸籍を請求する必要があります。広域交付の対象外となる戸籍が含まれると、郵送請求や定額小為替の準備が必要になり、手間も時間もかかります。

(3)相続人が想定より多い

戸籍をたどる中で、前婚の子、認知した子、養子などが判明することがあります。これらの方も法律上の相続人になる可能性があるため、連絡先の調査や遺産分割協議への参加が必要になります。

(4)兄弟姉妹相続・代襲相続で戸籍が増える

被相続人に子がおらず、親もすでに亡くなっている場合、兄弟姉妹が相続人になることがあります。この場合、被相続人だけでなく、父母の戸籍、兄弟姉妹の戸籍、場合によっては甥・姪の戸籍まで確認する必要があり、調査の範囲が広がります。

(5)相続人と連絡が取れない

相続人が遠方に住んでいる、長年交流がない、住所が分からないといった場合、遺産分割協議を進めること自体が難しくなります。戸籍収集だけでなく、その後の連絡調整も大きな負担になります。

5. 戸籍収集を弁護士に依頼するメリット

相続人調査と戸籍収集は、相続手続きの入り口です。ここで時間と労力を使い切ってしまうと、本来重要な遺産分割協議や相続財産の整理が後回しになってしまいます。

高石法律事務所に相続手続きをご相談いただいた場合、事案に応じて、弁護士が戸籍の読み取り、必要書類の整理、相続人の範囲の確認をサポートします。相続手続きの受任に必要な範囲で、職務上請求を利用して戸籍等を取得できる場合もあります。

また、相続人の中に面識のない方や連絡を取りづらい方がいる場合でも、弁護士が間に入ることで、感情的な対立を避けながら手続きを進めやすくなります。戸籍収集の段階で相続関係を正確に整理しておくことは、遺産分割協議、相続登記、預貯金の解約など、その後の手続き全体をスムーズに進めるためにも重要です。

6. まとめ:熊本で相続人調査・戸籍収集に困ったらご相談ください

相続手続きでは、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍を集め、法定相続人を正確に確認する必要があります。広域交付制度により便利になった部分はありますが、兄弟姉妹相続、古い戸籍、県外本籍、相続人との連絡調整など、ご自身だけでは対応が難しいケースも少なくありません。

「戸籍をどこまで集めればよいか分からない」「古い戸籍が読めない」「相続人が複雑で手続きが進まない」とお困りの方は、熊本市中央区の高石法律事務所へご相談ください。相続人調査から遺産分割協議まで、状況に合わせて丁寧にサポートいたします。

よくある質問

Q1. 相続で必要な戸籍は何通くらいですか?

家族構成、本籍地の移動回数、婚姻歴、相続人の順位によって異なります。被相続人の出生から死亡までの戸籍に加え、相続人の現在戸籍が必要になるのが一般的です。兄弟姉妹相続では、必要な戸籍がさらに多くなる傾向があります。

Q2. 熊本市の窓口で県外の戸籍も取れますか?

広域交付制度の対象であれば、本籍地が熊本県外にある戸籍も最寄りの市区町村窓口で請求できる場合があります。ただし、請求できる人の範囲、対象となる戸籍の種類、本人確認書類などに制限があります。

Q3. 戸籍収集だけでも弁護士に相談できますか?

相続手続き全体の中で、戸籍収集や相続人調査が必要になるケースは多くあります。戸籍の読み取りや相続人の確認で不安がある場合は、早い段階で弁護士に相談することで、その後の手続きの見通しを立てやすくなります。

代表弁護士髙石 雅之

執筆者

代表弁護士:髙石雅之

所属 熊本県弁護士会
登録番号 49659

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