弁護士コラム

熊本で親の銀行口座が凍結されたら?預貯金の相続手続きと仮払い制度を解説

2026.06.04

「亡くなった父の葬儀費用を支払いたいのに、ATMで預金を引き出せない」「銀行の窓口に死亡の事実を伝えたら、その場で口座が止まってしまった」――相続が始まった直後、こうした銀行口座の凍結に戸惑う方は少なくありません。

熊本でも、肥後銀行・熊本銀行・ゆうちょ銀行・信用金庫・JAなど、亡くなった方が複数の金融機関に口座を持っているケースはよくあります。預貯金の相続手続きでは、戸籍の収集、相続人全員の確認、遺産分割協議書や印鑑証明書の準備などが必要になるため、思った以上に時間がかかります。

この記事では、熊本で相続手続きを進める方に向けて、銀行口座が凍結される理由、凍結解除・払い戻しの流れ、必要書類、葬儀費用などで急いでお金が必要な場合の「預貯金の仮払い制度」、弁護士に相談すべきケースを解説します。

この記事でわかること

・死亡後に銀行口座が凍結される理由
・熊本の金融機関で預貯金の相続手続きを進める流れ
・必要書類と、書類不備で止まりやすいポイント
・葬儀費用などのために使える預貯金の仮払い制度
・高石法律事務所に相談するメリット

 

1. 亡くなった親の銀行口座は、なぜ凍結されるのか

金融機関は、口座名義人が亡くなった事実を確認すると、原則としてその口座の入出金、振込の受け取り、口座振替、貸金庫の利用などを停止します。いわゆる「口座凍結」です。

これは、金融機関が意地悪をしているわけではありません。亡くなった方の預貯金は、相続人の間で誰が取得するのかを決めるべき遺産に含まれます。凍結しないままにしておくと、一部の相続人が勝手に引き出したとして、後から「使い込みではないか」「葬儀費用に使ったと言っているが証拠がない」といった相続トラブルに発展するおそれがあります。

そのため金融機関は、相続人や遺言執行者など、正当に手続きを行う人を確認したうえで、払い戻しや名義変更に応じる運用をしています。

死亡後にATMで引き出すことは避けるべき?

死亡後、口座が凍結される前にキャッシュカードでお金を引き出せてしまうことがあります。しかし、引き出したお金の使途を説明できないと、他の相続人から不信感を持たれ、遺産分割協議がこじれる原因になります。葬儀費用や病院代などに使う必要がある場合でも、領収書や明細を残し、できる限り相続人間で共有しておくことが重要です。

2. 熊本で預貯金の相続手続きを進める基本の流れ

銀行口座の凍結解除や払い戻しは、金融機関ごとに書式や必要書類が少しずつ異なります。ただし、大まかな流れは次のとおりです。

  1. 金融機関へ相続発生を連絡する:通帳・キャッシュカード・口座番号が分かる資料を準備し、取引金融機関の支店、相続センター、Web受付などに連絡します。この時点で口座が停止されるのが通常です。公共料金や家賃の入出金に使っていた口座は、早めに変更手続きを行いましょう。
  2. 必要書類を確認する:遺言書の有無、遺産分割協議書の有無、相続人の人数、取引内容によって必要書類が変わります。金融機関の案内に沿って、最初に「何が必要か」を確認します。
  3. 戸籍・印鑑証明書・遺産分割協議書などを集める:相続人を証明するため、亡くなった方の出生から死亡までの連続した戸籍謄本や、相続人の戸籍謄本、印鑑証明書などを準備します。複数の金融機関で手続きをする場合は、法定相続情報一覧図を作成しておくと手続きが進めやすくなることがあります。
  4. 金融機関所定の相続手続書類を提出する:相続手続依頼書、委任状、遺産分割協議書、遺言書などを、来店または郵送で提出します。書類に不足や記載漏れがあると、再提出になり、完了までの期間が延びます。
  5. 払い戻し・名義変更を受ける:書類確認が終わると、代表相続人の口座へ振り込まれる、または名義変更が行われます。完了までの期間は金融機関や案件により異なりますが、書類がそろってから1〜3週間程度を見込んでおくと安心です。

3. 預貯金の相続手続きでよく求められる必要書類

必要書類は金融機関ごとに異なりますが、一般的には次のような書類が求められます。遺言書がある場合、遺産分割協議書がある場合、相続人が1人の場合などで、準備すべき書類は変わります。

  • 亡くなった方の出生から死亡までの連続した戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍、または法定相続情報一覧図の写し
  • 相続人全員の現在の戸籍謄本
  • 相続人全員または手続きを行う人の印鑑証明書
  • 相続手続依頼書、相続届、委任状など金融機関所定の書類
  • 遺産分割協議書(遺言書がなく、相続人間で分け方を決めた場合)
  • 遺言書、遺言書情報証明書、家庭裁判所の検認済証明書または検認調書謄本(必要な場合)
  • 亡くなった方の通帳、証書、キャッシュカード、届出印、取引内容が分かる資料
  • 払い戻しを受ける方の本人確認書類、振込先口座情報
ポイント

自筆証書遺言書は、法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用していない場合、家庭裁判所での検認が必要になるのが原則です。遺言書があるからといって、すぐに銀行で払い戻しができるとは限らないため注意しましょう。

 

4. 熊本の主な金融機関で注意したいこと

熊本県内では、肥後銀行、熊本銀行、ゆうちょ銀行、熊本信用金庫、熊本第一信用金庫、JA、労働金庫などを利用している方が多くいらっしゃいます。相続手続きの共通点は多いものの、受付方法や必要書類、来店予約の要否は金融機関によって異なります。

肥後銀行の場合

相続手続センターや店舗への連絡、郵送または来店による書類提出など、複数の手続き方法が用意されています。相続手続センターに来店する場合は事前予約が必要とされることがあるため、事前に公式ページや窓口で確認しましょう。

熊本銀行の場合

相続センターへの電話、来店、Web受付などの方法があります。取引停止は確認が取れ次第行われ、相続手続きでは、戸籍謄本や法定相続情報一覧図、印鑑証明書などが求められることがあります。急ぎの場合は、Webだけでなく電話や来店で確認した方がよいケースもあります。

ゆうちょ銀行の場合

ゆうちょ銀行では、相続の申し出、相続確認表の提出、必要書類の準備、書類提出、払い戻しという流れで進みます。相続Web案内サービスやアプリを使うと、窓口に行く回数を減らせる場合がありますが、利用条件があります。

信用金庫・JA・その他の金融機関の場合

地域の信用金庫やJAでは、取引支店での確認が必要になることがあります。預金だけでなく、定期積金、出資金、貸金庫、投資信託、ローンなどがある場合、手続きが複雑になることがあります。複数の金融機関に口座がある場合は、同じ戸籍一式を何度も提出することになるため、最初に手続き全体を整理しておくことが大切です。

5. 葬儀費用などですぐお金が必要な場合:預貯金の仮払い制度

相続人全員の合意がまだ取れていない場合でも、葬儀費用、病院代、当面の生活費などのために、亡くなった方の預貯金から一定額の払い戻しを受けたいことがあります。そのための制度として「預貯金の仮払い制度」があります。

家庭裁判所の判断を経ずに金融機関の窓口で払い戻しを受ける場合、各相続人が単独で払い戻しを受けられる金額は、原則として次の計算式で求めます。

単独で払い戻しを受けられる金額の計算式

相続開始時の預貯金額(口座・明細ごと) × 1/3 × 払い戻しを受ける相続人の法定相続分
※同一の金融機関からの払い戻しは、複数支店に口座がある場合を含めて150万円が上限です。

 

たとえば、相続人が長男・次男の2人で、亡くなった方の普通預金が600万円ある場合、長男が単独で払い戻しを受けられる金額は、600万円 × 1/3 × 1/2 = 100万円です。

ただし、仮払い制度を使う場合でも、戸籍謄本、印鑑証明書、本人確認書類などの提出が必要です。また、払い戻された金額は、後日の遺産分割でその相続人が取得したものとして調整されるため、「先にもらって終わり」ではありません。遺言書がある場合や、金融機関の取扱いによっては追加書類が必要になることもあります。

6. 自分で手続きする場合に起こりやすいトラブル

  • 戸籍が足りず、何度も役所に取り直しに行く:亡くなった方の出生から死亡までの戸籍が途中で切れていると、金融機関から追加提出を求められます。古い戸籍や転籍が多いケースでは特に注意が必要です。
  • 相続人全員の実印・印鑑証明書が集まらない:相続人が県外にいる、連絡が取りづらい、関係が悪化していると、必要書類がそろわず手続きが止まります。
  • 預金の使い込みを疑われる:死亡前後に多額の出金があると、他の相続人から説明を求められることがあります。領収書や通帳の写しを残し、使途を説明できるようにしておきましょう。
  • 遺言書があるのに手続きが進まない:遺言書の種類、遺言執行者の有無、検認の要否によって手続きが変わります。遺言の内容によっては、遺留分の問題が発生することもあります。
  • 平日の日中に銀行や役所へ行けない:金融機関や役所の窓口は平日中心です。仕事を休めず、手続きが後回しになる方も少なくありません。

7. 弁護士に相談した方がよいケース

預貯金の相続手続きは、書類さえそろえばご自身で進められる場合もあります。しかし、次のような事情がある場合は、早めに弁護士へ相談することをおすすめします。

  • 相続人同士で話し合いがまとまらない
  • 面識のない相続人、前妻・前夫の子、認知された子がいる
  • 一部の相続人が通帳やキャッシュカードを持っていて、出金状況が分からない
  • 死亡前後の預金引き出しについて、使い込みを疑っている、または疑われている
  • 遺言書の有効性や遺留分について争いがある
  • 相続放棄を検討しており、預金の引き出しが問題にならないか不安がある
  • 金融機関が複数あり、戸籍収集や書類作成に時間をかけられない

弁護士に依頼することで、相続人との連絡調整、遺産分割協議書の作成、金融機関への提出書類の確認、預金の使い込みに関する対応などを、法律上の見通しを踏まえて進めることができます。

8. 熊本で預貯金の相続手続きにお困りなら高石法律事務所へ

銀行口座の凍結は、相続手続きの入り口にすぎません。預貯金の払い戻しを進めるには、相続人の確定、戸籍収集、遺産分割協議、必要書類の提出など、複数の手続きを順番に進める必要があります。

熊本の高石法律事務所では、相続人間の話し合いがまとまらないケース、預貯金の使い込みが疑われるケース、相続人が多く連絡調整が難しいケースなど、相続に関するご相談に対応しています。

「銀行から必要書類を案内されたが、何から集めればよいか分からない」「他の相続人と直接やり取りしたくない」「葬儀費用の支払いのために、早めに預金を払い戻したい」とお悩みの方は、早めにご相談ください。状況を整理したうえで、必要な手続きと進め方をご提案します。

事務所名 高石法律事務所
所在地 熊本県熊本市中央区安政町3-16 ビジネス・ワン熊本センタービル7階
電話 096-356-7000
受付時間 9:00〜18:00(土曜・日曜・祝日休業)※最新情報は公式サイトをご確認ください

 

9. よくある質問(FAQ)

Q1. 親が亡くなったことを銀行に伝えると、すぐに口座は凍結されますか?

金融機関が死亡の事実を確認すると、原則として入出金や口座振替などの取引は停止されます。公共料金や家賃の入出金に使っている口座がある場合は、早めに支払先・入金先の変更手続きを行いましょう。

Q2. 相続人のうち1人だけで銀行預金をすべて引き出せますか?

通常は、相続人全員の関与や、遺産分割協議書、遺言書、遺言執行者の権限などが必要になります。ただし、預貯金の仮払い制度を利用できる場合は、一定額について相続人が単独で払い戻しを受けられます。

Q3. 葬儀費用だけでも故人の口座から支払えますか?

相続人全員の合意がない段階でも、預貯金の仮払い制度を使える場合があります。ただし、戸籍謄本や印鑑証明書などの書類が必要で、払い戻し額にも上限があります。

Q4. どの銀行に口座があるか分からない場合はどうすればよいですか?

通帳、キャッシュカード、郵便物、スマートフォンのアプリ、確定申告資料などから取引先を確認します。ゆうちょ銀行などでは相続に伴う貯金等の照会手続きが用意されている場合があります。

Q5. 凍結解除までどれくらいかかりますか?

金融機関や案件によりますが、必要書類を提出して不備がなければ1〜3週間程度で払い戻しが行われることがあります。戸籍不足、相続人間の対立、投資信託・貸金庫・融資取引がある場合は、さらに時間がかかります。

Q6. 弁護士に依頼すると何をしてもらえますか?

相続人や財産の調査、戸籍収集、遺産分割協議書の作成、相続人への連絡、預金の使い込みに関する対応、金融機関提出書類の確認などを、ご事情に応じてサポートできます。相続税申告が必要な場合は、税理士との連携が必要になることもあります。

代表弁護士髙石 雅之

執筆者

代表弁護士:髙石雅之

所属 熊本県弁護士会
登録番号 49659

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